毎年、九月も半ばを過ぎると祭礼に向けて地車の準備が始まります。
秋祭りとは、地車に神霊を宿して曳行することで神様の御利益を、村内に受け与え五穀豊穣を願うものであります。
しかし、地車本体には神霊は宿らないといつことをご存じでしょうか?
神様を招くには神の依りつくところが必要なのです。
神様の依りつくところを、依代といい、依代には植物の枝葉や岩石、旗、幟、御幣などあらゆるものがあるといわれています。そして神霊の依りついた物体を祭る神聖な場所が地車本体ということになるのです。
では、御幣や地車はどのように準備され祭り当日を迎えているのでしょうか・・
祭り三週間前、「コマの引き揚げ」と「神の依代である御幣作りの準備」に入ります。
男性会員は、1年間池に漬け置いたコマ(コマが乾燥して割れない為に秋祭り終了後、漬けている)を引き上げる作業をしています。コマは松の木の輪切りで直径二尺・幅九寸五分と、それだけでも重いものですが、水を含んだコマは想像以上に重く、池からクレーンを使って引き上げ、地車小屋まで運び込みます。それを真水で丁寧に洗い、二週間乾かしておくのです。
こうすることで、コマは適度な水分量を内側に含み、車のタイヤでいうと空気圧のようなクッション効果をもち、そして表面は本番までに乾燥し、適度な強度で曳行時、地車の重さにも削りすぎることなくちょうどいい状態で曳行できるようになるのです。
その間に、女性会員は「御弊作りの準備」に入ります。御幣作りは女性会員の大切な仕事になっています。
巻紙に丁寧に寸法を取り、蛇腹に折り重ね、重しをして二週間紙の巻癖を取るために寝かせておきます。ひと巻30mの巻紙を、15本以上寸法取りをして折っていく作業はなかなか大変ですが、とても神聖な気持ちになる作業のひとつです。
祭り一週間前、寝かせておいた巻紙は癖もきれいにとれています。蛇腹折り部分を一枚一枚切り離し、寸法通りに刃を入れていきます。神様の依代となる御幣なので、刃を何度も取り換えな
がら、ひとつひとつの作業を大切にこなしていきます。
出来上がった御幣は三又の角材に取り付け、紅自の水引で結び、上安倉では御幣がバラバラにならないように御幣と同じ紙で作った輪で、ひと房ごとに止めています。こうすることで地車の獅噛もしっかりと見ることができるのです。
また宮入りや蔵入れ、ご祝儀を頂いた時に振る御幣は、写真のように地車に付けているより、少し小さめの御幣を別に作っています。
そして同日、「住吉神社の幟立て」や地車の最終準備の中で、もっとも神経を使う「コマの取り付け」、コマが動きやすいようグリスの塗り込み、張采棒と台八のロープ締め、上からさらしでしっかり巻き上げる、これは地車の動きがスムースになる為の一つです。
他にも提灯の取付けや太鼓の備え付けなど細々した作業が多々あります。
でも準備も祭りの一環だと、会員達は大変ながらも準備に時間を割き、また楽しんで勤しみ、祭り当日を幾つになっても今か今かと待ちわびているのです。