だんじりに欠かせないもののひとつとして、「囃子」があります。
囃子は「鳴り物」と言われ、祭礼では「大太鼓」・「小太鼓」・「鐘」を使って奏でます。もちろんその三種だけではなく、笛や弦楽器を使うところもありますが、上安倉では「大太鼓」・「小太鼓」・「鐘」を使っています。
上安倉の「大太鼓」は、皮が張ってある面の直径は一尺九寸(約58センチ)で長さ二尺三寸(約70センチ)、胴は欅(ケヤキ)材です。
平成10年「北本太鼓工房」に皮の張り替えを依頼した際にわかったことなのですが、それまでに皮の張り替えは10回行われており、現在の大太鼓は約100年位前のものであるとのこと・・。
そこで安倉の長老に尋ねてみると、明治25年、新調地車を購入してきたとき、先代の太鼓台(現在、尼崎東大島地区地車〈其の八参照〉)に使っていた大太鼓を新調地車(現在の地車)に乗せようとしたところ、サイズが合わなかった為に、慌てて大阪まで太鼓を買いに行ったということのようです。ということは、現在使用している大太鼓は、地車新調と同じ時に入手したもので、地車と同じく120年の歴史があるものということです。
「小太鼓」は平成6年に購入したもので、皮の部分が 一尺一寸、欅材で購入前は、平太鼓を使い、小太鼓はあまり使っていませんでした。「鐘」は青銅の鋳造で作られた釣鐘の喚鐘を使用しています。
太鼓をたたくものを「撥(バチ)」と言い、樫や桜の木でできています。
鐘は鹿木(シモク)と言う鹿の角を竹(他の木も有り)にさしたものを使用してたたきます。こうした囃子の小道具もまた大切な歴史のひとつとして大切に継承していきたいものです。
さて、上安倉の地車囃子は、「道中囃子」「角を出がる手前、地車が止まるときの囃子」「地車を90度曲げるときの囃子」「宮入り・蔵入れ時の囃子」と大きく分けて四つの囃子を叩いています。上り坂や下り坂などは道中囃子に強弱をつけるなど、囃子の微妙な違いを聞き分けることで、地車がどういう動きをしているのかがわかるのも地車曳行の楽しみのひとつとも言えます。
ただ、今私が気になっていることのひとつに・・現在どこの地域でも問題になりつつある「均等叩き」です。ゆっくり歩く、早めに歩く坂道、曲がり角などの微妙な違いを叩き分けず同じリズムを叩き続けるやり方が主流になりつつあることです。果たして安倉はこの先、大丈夫なのでしょうか?
もちろん、安倉は太鼓の練習も、囃子の継承も若者達が中心に頑張ってくれています。この頑張りを地車曳行が続く限り、ずつと継承していってくれることを期待しています。
どうかこれから鳴り物に携わる方々に「早く進む」「止まる」「曲がる」という地車の動きを「囃子」で表現することの大切さを継承していただきたいと思う次第です。